歪みを解消する今話題の骨盤ダイエットブログ:31 7 20
未熟児で生まれた私は病弱で、
小学校に入るまでは病院と縁が切れず、
入退院をくり返していた。
歌が得意な私は、
ベッドの上でおもちゃのピアノを叩いては歌い、
看護婦さんにアメや板チョコをもらっては、
上機嫌だったと母親に聞かされた。
「三つ子の魂百まで」と言うけれど、
私のピアノ好きはその頃から始まったらしい。
私は戦後の混乱の中で小学校に入学した。
先生のピアノ伴奏に合わせて歌いながら
私もピアノがほしい、
弾けるようになりたいとずっと思っていた。
しかし敗戦後の衣食住にもこと欠く時代のこと、
バラック住まいの私の家にピアノは高嶺の花だった。
私が高校生になって間もない頃、
同じコーラス部に席を置く仲間の家に遊びに行った。
応接間に黒塗りのピカピカのピアノが鎮座し、
仲間が「弾いてもいいよ」と鍵を開けてくれた。
私は学校にある壊れかけたオルガンで練習していた
「春の小川」を両手で弾いてみたが、
私の春の小川はさらさら行かなかった。
仲間の家で恐る恐る触れた鍵盤のひんやりと冷めたい感触と、
ウエストにズンと響く重い音が、ピアノへの憧れを一層募らせた。
興奮さめやらぬ私は
そのよる、父にピアノを買ってほしいと懇願した。
父は一瞬、困惑した表情をみせたが…
「この狭い家にピアノを置く場所が何処にある。
ピアノを弾く暇があったらもっと母さんの手伝いをしろ!」
吐き捨てるように言うと
父は乱暴に障子を開け部屋を出て行った。
私は唇をかみしめ、
父の少し痩せて小さくなった背中を見送った。
それ以後、ピアノの事は一切くちにしなかった。
川元誠一
川元誠一の紹介
http://kn.ndl.go.jp/list?creator=%E5%B7%9D%E6%9C%AC+%E8%AA%A0%E4%B8%80&viewRestricted=1&detailSearchTypeNo=A&searchMode=A
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